活動の振り返り
【2019年度 新潟市農村文化協議会】

日時

2020年1月25日 12:30~13:30 
@北方文化博物館

参加者

  • 赤塚伝統芸能保存会   山川潤
  • 横越新田神楽保存会   片山篤
  • 栄町神楽        呉井善行
  • 事務局 北方文化博物館 馬場大輔

今年度の活動の大きな柱の一つに、会員や興味のある神楽を視察・インタビューに行く、というものがありました。まずはそれぞれ振り返っていきます。酒屋太々神楽の練習を、赤塚伝統芸能保存会 山川さん、栄町神楽 呉井さんが見に行かれました。おふたりはこれまでに、酒屋の神楽を見に行ったことはありましたか。

呉井: 見たことはありましたが、話したことはなかったです。
山川: 神楽の流れが赤塚と同じという接点がありましたし、郷芸(新潟市伝承芸能保存会による「郷土芸能公演」)でも一緒に出演したことがあります。練習を見学して、しっかりしているなと感じました。メンバーの統率がとれている点、衣装の管理方法は見習わないといけませんね。火事になっても大丈夫なように衣装やお面を保管されていました。赤塚伝統芸能保存会として見習わないといけないなと思いました。赤塚伝統芸能保存会で途絶えてしまった舞もあるので、同じ流れである酒屋太々神楽からは教えてもらうことができると思います。赤塚の場合は、代が代わると節の取り方など演奏が変わってしまうような気がしているので、今度は伝承方法についても聞いてみたいですね。
呉井: 神楽の種類は違いますが(栄町神楽は獅子神楽)、神楽だな、と感じました。神社の拝殿で練習をしていたのですが、練習に来た人たちが神様に必ず二礼二拍手一礼をしてから練習に入っていました。
全員: 耳が痛いですね。
山川: 神社が広く作られていていいですよね。舞殿も別にありましたね。
呉井: 神様の前でずっと練習をしているという環境はいいと思うし、ちゃんとしているなと感じました。あとは、女性の方も多くいらっしゃいました。女の神様の舞は女性が舞うところは珍しくていいな、と思いました。
山川: 若い人も入っていましたし、女性が多いのはうらやましいです。

そして横越新田神楽保存会 片山さんが栄町神楽も出る大囃子祭りに行かれましたね。

片山: 栄町神楽は以前にも見たことはありましたが、大囃子祭りはターゲットが違うなと感じました。横越新田神楽の場合は、お祭りにあわせて神社の境内に桟敷を設置をします。それに対して、栄町神楽は神楽殿が常にありました。とても高く、見る人はずっと見上げていました。なんでこんなに高くしたのかな、と思っていたら、神様に見せるためですね。
呉井: 社殿が高く、その目線の高さで神楽殿が建っています。なので、拝殿から見るととても見やすいですね。

呉井さんは横越新田神楽保存会の練習を見に行かれましたね。

片山: 祭り直前の稽古でしたね。
呉井: 実際に獅子の幕に一緒に入れてもらって、練習しました。幕が透けているというのにとても驚きました。
片山: はじめは何を驚いているのかと思いました。「見える!見える!」とおっしゃっていて。
呉井: 栄町神楽の幕は完全に見えないのですが、横越新田の神楽は幕の中から外が見えるんですよ。外から見ると分からないですが。
片山: 頭持ちの人間の頭がくる所だけ、目が粗いようになっています。その後ろにいる二番手の人が、その目の粗い部分を頭持ちの人が見やすいようにコントロールしています。横越新田の場合は、天狗を獅子の上に乗せる場面もあるので、二番手は天狗の人を肩車しないといけません。二番手はかなりハードです。
呉井: 私はその後ろ、三番手に入れてもらったので、大変さや栄町神楽と全然違うことが分かりました。
子どもたちもすごかったですね。人数も多いし、さらに統率もとれている。まず子どもがいないですから。
片山: 子どもは毎年かわりますが、小学校4~6年生の男の子が入ってきます。横越新田の地域の中に「自治会」「横越新田神楽保存会」「育成会」があり、この三団体が協力して祭りをしています。「育成会」という会のお母さん方が集めてきてくれます。
馬場: 横越の神楽を見たときに、横越新田神楽保存会は「育成会」が機能しているという印象がありました。お互いがウィン・ウィンになる形になっていました。きちんと関係を築いてらっしゃるなと感じました。特に、メディアの取材受入れ時の対応では、保存会の方々が育成会に入っている保護者の方々をすごくケアしているなと。
片山: 子どもを教える、という点で、やはり小学生が「おもしろかったな」と思ってくれることが大切です。子どもの時に神楽をやって、おもしろかったと植えつけないと、またこの組織に入ろうとなりません。夏にまたあそこの場所に行けば、あの大人たちがいるかもしれないと戻ってきてくれる人がいるかもしれない。実際に自分はそうでした。
呉井: 上手ですね。

練習見学をきっかけに、横越新田のお祭り当日、横越新田神楽保存会が栄町に奉納舞をされました。

呉井: 練習見学の際にとんとん拍子で話がまとまって、来てくれることになりました。話がまとまったのは奉納舞の2日前のことですね。
片山: 行った時はすごく緊張しました。神社ではなく、町の公会堂が会場でしたが、たくさんの人が集まってくれました。
呉井: 町内のおじいちゃんおばあちゃん、子どもたちですね。
片山: 各保存会はそれぞれプライドを持ってやっていると思います。だからこそ、他の地域へ行く、他の地域の神楽を受け入れる、ということはあまりないのではないでしょうか。自分たちのいる横越内でも、ないですね。
呉井: ないですね。おそらく、私たちの町内に他の地域の神楽が来たのは初めてです。
片山: 勉強させてもらいました。
馬場: 話がまとまるすばやさからも、若い世代、フットワークの軽い世代に決定権がある。こんなに早さを持って決められるということは、そういうことなのかなと思いました。
呉井: 見に来てくれた人も、こんなことないね、なんて言いながら、とても喜んでくれました。ビデオを撮っていたので、それをみんなで見たりしています。天狗と獅子が絡むというのは、栄町神楽はないので、それを見ただけでも喜んでいました。

奉納舞の翌日、呉井さんは横越新田のお祭りを見に行きましたね。

呉井: このお祭りがまたすごかったです。ひとつの神社に3団体の神楽が来るんです。神楽は神社と一対一、対になっている感覚でしたが、そういうものではないんですね。普通はけんかするものだと思います。新津夏まつりは、神楽はひとつしかないのですが、神社にかかわっている町内は数十町内あります。その中で7町内が屋台をもっていますが、ひとつの神社にいくつも神楽があることはとても驚きでした。ただ、よく考えると、秋葉区の堀出神社は8月19、20日で祭りをするのですが、19日は堀出神社に新津の神楽が13団体も集まっています。堀出神社が新津の神社の中心にあるので、いろいろな神楽が来てくれる、舞ってくれる、というものです。それはゲストで来てくれている、という感じです。それに対して、横越新田の神社は本拠地、ホームですよね。そのホームに3つも神楽があるのはすごいなと。ホームの取り合いにならないのかな、と。
片山: 自分の場合は、幼い時からそうだったので、普通ですね。上町、中新田、下町という線引きはされています。何時にこの町の舞い込みを終え、何時になったら次、という感じで、時間まで区切られています。
呉井: カルチャーショックです。見に行ったら、出店はあるものの、そこに子どもはいないし、神社の拝殿の中にはいたようですが、境内にも誰もいない。祭りは今日じゃないのかな、というぐらい。そうしていると、急に笛や太鼓の音が聞こえてきて、何かきたな、と。やってきたのを見ると、ひと町内まるごと持ってくるんですね。ひと町内の子どもと大人がまるっと神社に入ると、途端に祭りらしくなりますね。それで1時間経つと、違う町内に総とっかえされます。子どもたちがいるところに僕らが行く、という祭りの形ではなく、全員を連れて来て、連れて帰るというスタイル。
馬場: 町を練り歩いていますよね。
片山: 本当に練り歩いているのは横越新田だけです。上と下はほぼ一本道で神社まで来ます。横越新田はぐるっと2~3時間歩きますね。山車を引っ張って町内を練り歩いて、太鼓の音で町内の人が祭りの人たちが来たと気付く。そして、山車を町内の人たちとみんなで引っ張っていく、という流れです。
呉井: この形をきれいに売り出したら、もっとクローズアップされそうですね。謂れを整理し、発表し、告知したら、普通じゃないね、となると思います。
片山: 普通のお祭りとタイプが違うかもしれませんね。お祭りに行くのではなく、家の前でお祭りが来るのを1回待つのです。
全員: いいですね。
片山: 祭囃子が聞こえてきたら、ばあちゃんとかが「ほら来たぞ」と言って、みんなで出ていく、という感じ。
呉井: 寄席太鼓みたいなものですね。
山川: 自然な流れができていますね。
片山: そして実は、個人的に栄町へ1月1日に行きました。
呉井: 新津の堀出神社でやる元旦奉納を見に来てくれました。
片山: その時に幕に入れてもらいました。
呉井: お返しですね。「見えないでしょ」と言って。
片山: そして一緒に舞わせてもらいました。
呉井: 今年も夏は8月19日ですので、来てほしいですね。

赤塚は今年のお祭りはいかがですか。

山川: 今年は、佐潟の地域の祭りに行くことになりそうです。昔は赤塚祭りと言っていたのですが、地域の区分けや隔たりを解消するために、「コミュニティ佐潟」というものを作って、「佐潟まつり」にしました。佐潟を中心に人が集まる、というもので、そこのステージに赤塚伝統芸能保存会が出たり、中学生のコーラスがあったりします。隣の四ツ郷屋も獅子があり、その獅子が出た時には子どもたちは喜んで噛まれにいっています。昔は三尺玉を上げたりしていたのですが、ゼネコンが新しい団地を作った関係でお金を出していたようです。しかし、資金の問題で13年くらい前に終わってしまいました。それから、一から手作りでするようになりました。今ではいろんな地域の団体などが参加しています。今年は8月22日かな。

お祭りはどこも日程が重なりますよね。

片山: 被らないのは巻祭りくらいじゃないですかね。今年度はいろいろ見られて楽しかったです。今年はもう堀出神社の19、20日は空けています。
山川: 屋台が出るのも19、20日ですか。
呉井: そうです。来てもらう約束したので。毎年同じ日です。
山川: 赤塚伝統芸能保存会の稚児舞は平成入って途絶えました。約10年前に復活させたのですが、かつては、特定の小学生4人が1か月くらい休んでいたのです。いろんな神社に呼ばれて、その4人だけ1か月くらい勉強できないので、学校からよろしくないと指摘をうけました。でも、地域の人たちも、みたいよねと言うんですよ。自分が会に入って4~5年たった頃に、やってみようかなと思って復活に向けて動きました。そこで学校に声を掛けたところ、当時の校長先生が理解してくれて、子どもが出られるようにし協力してくれました。やはり理解と協力がないとできないですね。
馬場: 新津は学校が休みの時期ですか。
呉井: 夏休みですね。登校日が祭りと被っていたときもあったのですが、それは祭りとずらしてもらいました。
馬場: さすがに1か月はまずいかもしれませんが、それくらいしないと、地域の祭りは続かないですよね。
片山: 地域の行事に参加するということは大事ですよね。
呉井: 地域のおじさんと話をするのは大事ですよね。若手は、おじさんと渡り合ってなんぼじゃないですか。気に入ってもらえるかどうか、が勝負です。さっぱりしているから、はじめは嫌われていても、途中から好きになってもらえるチャンスはありますよね。
山川: どうやってうまく交流しているかなど、聞けばみなさん持っていますよね。町のバックアップがないとできないところもあります。町内のお金で神楽の道具を買うとか、直すとかをしないと自分たちのものであるという意識がない、という話があったと思います。たしかにそうだな、と思います。赤塚伝統芸能保存会は補助金を引っ張ってきて道具を買いましたが、それはそれで宣伝になりました。でも、町内から出してもらわないとだめなんだな、とも思いました。どこで道具を買うか、とかも困りますよね。子ども用の刀を買うのに、長岡の太鼓屋さんに聞いたら、そこから別の人に聞いてくれて。岐阜に鍛冶屋さんがあると。本物も作っているが、模擬刀も作っている、と。そこから買いましたね。そういう手もあるんだな、と。聞いてみないとわからない。
呉井: 探すのが大変ですよね。道具の名前もわからない。栄町神楽でも、神楽鈴を買いたかった時、何という名前なのか知らなくて。普段「鈴」としか呼ばないですからね。
全員: そうそう。
馬場: 横越新田神楽保存会は新潟市の東アジア文化都市交流事業の一環である「箸フェスティバル」で韓国に行かれました。その時も大変でしたよね。
片山: この名前何、と言われても、知らないし!みたいな。名前だけでなく、重さも苦労しました。
馬場: そうそう。保険をかけないといけないからですね。通関するために準備をしなければいけなくて、どんなものが何個、何kgとか。ものすごく細かくて。
片山: 海外遠征があるときは、覚悟してください。結構たいへん。
馬場: 協議会があると、そういう受け皿になりやすいですよね。行ってみたい、という団体が順番に行ってみる、というのはとても経験になりますよね。
呉井: 周りからみると、うらやましいですよ。神楽をやっている人たちは自分たちの神楽が好きだと思います。それが海外行きました、大きい会場でできました、ということは嬉しいと思います。
片山: 海の向こう側の人たちに向けて新潟のちいさな地域の神楽が舞えたというのは、すごくうれしいことですね。
呉井: 栄町神楽は国民文化祭の「新潟・阿賀郷土芸能祭」に出演させてもらいました。やっているメンバーからしてみると、少し鼻が高いですね。
馬場: 北方文化博物館での国民文化祭事業では、横越上町さんから出てもらいました。かなり盛り上がりましたね。今後も新潟の神楽の発信はもちろんですが、団体同士でのつながり、困っている団体と協力し合うような形を続けられたらいいですね。