【事業アーカイブ】2/2 語りの場vol.27 持続可能な文化芸術活動を考える①「周囲を巻き込み、想いを形にしていく ~ARTS for HOPEの10年~」

  • 投稿日:
    2022.03.02(水)
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    ゲスト
  • 記事カテゴリー:
    事業レポート
  • ジャンル:
    美術
文化・芸術の分野で活動する方々をゲストとしてお招きする、トークシリーズ「語りの場」。市民のみなさんが新たな視点や価値観と出会い、知り(学び)、自らの活動を広げていくことで、魅力あふれる活動が、まちに根付いていくことをめざしている。
語りの場vol.27 持続可能な文化芸術活動を考える①「周囲を巻き込み、想いを形にしていく ~ARTS for HOPEの10年~」
開催日:令和4年2月2日(水)19:00~20:30 ※Zoomにて開催

ゲスト
高橋雅子(ホスピタルアーティスト/Wonder Art Production代表/NPO法人ワンダーアート代表理事)

聞き手
若林朋子(プロジェクト・コーディネーター/立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任教授)
ゲスト 高橋雅子(ホスピタルアーティスト/Wonder Art Production代表/NPO法人ワンダーアート代表理事)
聞き手 若林朋子(プロジェクト・コーディネーター/立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任教授)
震災前の取り組み
ARTS for HOPEの活動をご紹介いただく前に、東日本大震災以前はどのような活動をされていたのか、高橋さんにお話しいただきました。

高橋:
こどものアートプログラムとか、病児者支援、障がい児者支援、そして、アメリカのアウトサイダーアートの展覧会であるとか、アフリカ・アマゾンなどの異文化紹介の展覧会も行ってきました。

なかでも、ホスピタルアートというのが、私の活動のすべてのバックボーンとしてあります。その中で一つ、「Happy Doll Project」というものがあります。これは16年目になるのですが、色々な病院で入院している子どもたちや医療従事者の皆さんと一緒に、願いを込め、夢の形を作品にしていきます。そして、病院の中で院内展示をして、次の病院に移していくという活動です。

一つひとつの病院が孤立してしまう、入院している子どもたちが外に出られない、ということがあり、作ったものが自分の代わりに旅をしていくというストーリーになっています。参加者は全国の病院、患者さんたちや家族の方、医療従事者、ボランティアさんなどです。
アートによる心の応援活動 ~ARTS for HOPE~
ARTS for HOPEでは、高橋さんがこれまで培ってきたホスピタルアートや、障がい児者支援、病院でのプログラムを活かし、アートによる様々な被災地支援を行っています。

高橋:
震災から5年目くらいの時に「風化」が非常に問題になってきて、東北ではまだまだ復興が進んでないところ、取り残されているところがあるにも関わらず、例えば西の方や東京では、もう震災なんて終わったでしょ、というムードがあって。取り残された感を地域の皆さんは感じていたので、東北から伝える、今ここで生きている、という展覧会を行いました。

クロストーク

語りの場後半は、若林さんにもお入りいただき、高橋さんとのクロストーク形式で進行しました。

若林:
高橋さんは優しく穏やかな感じなのですが、ARTS for HOPEの立ち上げの時に、静かに力強く「10年はこの活動を続けます」と言い切ったのですよね。それがあまりにもキッパリとおっしゃるので印象に残っているのですが、当時、お金も何も集まっていないなかで、10年は続けると。なぜかというと、「いま支援活動に行ったときに、一緒に時間を過ごす子どもたちがその10年後どうなっているか見届けないといけない」と。そう言われると、静かだけれど強い決意表明に、何か私もついていきたいような気持ちになったのです。

現在はARTS for HOPEの理事を務め、その活動を見守る若林さんから高橋さんへ、ARTS for HOPEの運営について、4つの質問が投げかけられました。
①活動資金はどのように確保しているのでしょうか?
若林:
ARTS for HOPEは、東日本大震災の発生を受け、2011年3月に立ち上がりました。震災は思いもかけず起きたことで、その資金を事前に準備していたわけではありません。そして、「10年間続ける」と言ってもその見通しも全くない中で、どうやってこの活動を回してきたのでしょうか。

高橋:
そうですね。「企業の協賛金」と「個人の方のご寄付」と、それから「助成への応募」ですね。月日を重ねていく中で、企業さんとのコラボレーションということもあるのですが、最初は自費でスタートして、活動しながらどんどん資金をかき集めていきました。活動を始めたばかりの頃は、まだ復興支援等の助成金も整っていなかったので、やはり企業さんに協賛金のお願いにあがった、という形です。

今までの10年間、毎年、来年はどうなるかなと思いながらやってきましたけれども、企業さんとの信頼関係が厚くなっていくと、色々と心配してくださって、非常に長いスパンでのご支援をくださっていて、それは大変有難いなと思っています。

サポートしてくださる企業や、関係者の皆さんというのは、一緒に活動しているチームだと思っています。被災地に一緒に行けなくても、活動が一つ終わるごとに、欠かさず、できるだけスピーディーに、取り組みの報告をしたいという思いがあって、スタッフに手伝ってもらいながら、続けてきました。
②日々の運営やスタッフやサポーターなど、どのような体制で活動していますか?
高橋:
岩手・宮城・福島、3県に現地チームというのを作って、そこのチームと連動して活動を行ってきたのが、現場の主な活動です。東京からも月に2~3回は、遠征で数日滞在して活動するチームがあります。またそれ以外に、全国、海外も含めて、ボランティアさんを募集し、各地で手伝ってもらっています。

スタッフに関しては、本部や、岩手・宮城・福島のメンバーも、関わってくれているメンバーは時給ですが、一応有償です。ボランティアさんは無償でお願いしています。

一方的にサポーターの方に支援していただくというのは、とても心苦しいので、サポートしていただく分、何らかのお返しやメリットを考えています。例えば、企業が協賛金をくださって、その代わり、その企業が社会貢献として活動する場を作るとか、コラボレーションするとか。また、お付き合いが長い企業とは「一緒に何かを生み出していこう」という相談ができます。現代社会で足りない支援とか、誰かがやらなければいけないこととか、官民すべて色々なネットワークのもとに、お互いに良いところを出し合いながら実現していければいいなと模索しています。

若林:
傍で見ていると、ARTS for HOPEにおける支援者との関係づくりは、提案型のような気がします。「こういうことをやって欲しい」「はい。やります。」というものではなく、何か提案をしていく、「こういうことを一緒に実現しませんか?」というタイプの関係づくりだと思います。

資金を提供したりサポートする側としても、「こういうことができたらいいですよね」という提案をしてくれると、「確かに、それならやってみようか」とか「それだったら手を貸したいな」という感じになると思います。提案型というのが一つ鍵なのかなと思います。
③満を持して法人化した経緯を教えてください。
高橋:
ARTS for HOPEは10年間、法人格を持たずに活動してきました。これまでは、本当に自分たちの体制を作るという余裕がなくて、現場の活動が切れ目なく続いていたし、その合間には、活動資金を作らねばならず駆け回っていたということもあり、自分たちの組織を固めて法人化しよう、という余裕がありませんでした。

その間にも、やはり企業さんから「法人化して欲しい」「法人格を持ってくれたら、もっと支援しやすい」ということを何度か仰っていただきました。

10年経って見渡した時に、最終的に仙台で障がいを持った人たちの支援、それを行う機能として根付こうと考えました。そうなってくると、そこでずっしりと活動することになるので、「じゃあ法人化だろう」ということでやっと動き出し、東京の事務所も仙台に移し、ARTS for HOPEを含めた法人の事務所を設置しました。

それぞれの法人格の種類や特徴を比べた時に、私たちの活動に近いというか、私たちの活動らしい形でいけるのはNPOではないかなと思って、NPO法人を選びました。
④日々のコミュニケーションで大切にしていることを教えてください。
若林:
困難な状況のもとにある方とのコミュニケーションがとても多い活動だと思います。その中で、高橋さんがこれだけは大切にしようと思っていることがあれば、教えてください。


高橋:
あまり意識していなかった気がするので、そう言われてみるとどうだったかなと思うのですが、そういう皆さんと対するときに、安心感というのは大切かなと思うのですね。交流するときに、「ああ大丈夫だな」という安心感が、障がいがある方でも、センシティブな病気の方でも、必要な気がします。

被災で困難な状況にある方、病気で命と向き合っている方とか。どんな方でも等しく大切な存在だと思うので、そう思って接するのか、偏向した感覚を持ってしまうのかで、相手はそれをとてもよく感じると思うので、その方の良い部分、素敵な部分というのに反応してコミュニケーションをとると、向こうからも良いものが返ってきて、良い状態のスパイラルになると思います。ネガティブなものを発すると、相手もそうなると思うので、大切だと思います。

被災地の人たちや病気の人たちとどう向き合うのですか?とか様々な質問をいただくのですが、実際にいま目の前にいる一人ひとりが、例えば、障がいを持っていても様々な性格だったり、被災を経験していたとしても、被災をする前の時期の彼らもいるわけで。なので、一人ひとりと向き合って、この人は何が欲しいのだろう、何が生きづらいのだろう、どういうことが好きなのだろう、みたいな、一人ずつを見るということが大事だと思います。
様々な活動のなかで、これだけは守り抜きたいこと―
高橋:
私は、次から次へと「これはなんとかしたいな」という出会いがあって、それに順応していって、今に至るのですけれども、アートの力というものを自分なりにとても信じていて、それを活かしてできることを何でもやってみたいと思うし、あと今出会っている心の応援が必要な方、「病気を持っている」「障害を持っている」「たまたま被災してしまった」、それはみんな、いつ自分に降りかかるかもしれない自分事なので、それを良い状態にしていくことによって、社会が住みやすくなれば良いなと、心から思っています。