【助成事業紹介】幼児教育を学ぶ学生と共に考える「絵本の世界」へのアプローチにより、子どものダンスへの興味・関心を深める(テーマ別プロジェクト助成)

  • 投稿日:
    2026.01.13(火)
  • written by:
    ゲスト
  • 記事カテゴリー:
    文化芸術活動に関する支援事業
  • ジャンル:
    地域文化拠点
写真(上):身体と心で聴く 絵本の世界vol.2
●身体と心で聴く 絵本の世界 Vol.2
公演日時2025年6月21日(土)
10:30~/11:30~
出演朗 読:平石実希
ダンス:池ヶ谷奏、新潟青陵大学・短期大学部ダンス部、他学生有志
おはなし「あっぷっぷ」(中川ひろたか/文、村上康成/絵、ひかりのくに)
「オニじゃないよ おにぎりだよ」(シゲタサヤカ/作、えほんの杜)
「きたかぜとたいよう」(イソップえほん、 蜂飼耳/文、山福朱実/絵、岩崎書店)
●Studio奏蔵舎1周年記念公演
公演日時2025年10月12日(日)17:00~
2025年10月13日(月・祝)11:00~/14:00~
出演・公募Kids出演者と一緒に創る「身体と心で聴く 絵本の世界」シリーズ
振付:池ヶ谷奏
朗読:平石実希
出演:鎌田唯月、高橋遼大、永井柊子、大矢純蓮、小出陽子、長岡美心、山本志奏
使用絵本:「もりのちいさなしたてやさん」(こみねゆら/著、文溪堂)

・池ヶ谷奏ソロ作品「Then, Now and Then」
特別振付:富岡櫂
出演:池ヶ谷奏
●2公演共通
会 場Studio奏蔵舎(新潟市中央区本町通12番町2782 文化座本町Sono内)
協力新潟青陵大学 福祉心理子ども学部 子ども発達学科 佐藤菜美・学生有志
事業実施者町屋本町アートプロジェクト
採択金額250,000円
選択テーマ文化芸術で子ども・青少年を育成する取り組み
実施者からの報告
昨年度開催した「Studio奏蔵舎オープニングイベント」において、Studio奏蔵舎がある”しもまちエリア”の中学生を対象とした無料招待公演予定しましたが、申し込みが無く、チラシをみた親子数組が本公演にお越し下さったのみに留まりました。この経験から、地域の⼦どもたちには「ダンスを観る」という選択肢が⽇常にはほとんど無いことが分かりました。よって今後活動していくにあたり、⼦どものうちからダンスや身体表現が⾝近にあり、気軽に触れられる環境を整えるための導線づくりが必要であると考えました。
そこで、子どもたちにとって身近にある「絵本」を題材に、ダンスや身体表現への興味・関心を促す企画として、「身体と心で聴く 絵本の世界」を立ち上げました。

今回は、Studio奏蔵舎から近隣に位置する新潟青陵大学 福祉心理子ども学部子ども発達学科の佐藤菜美准教授、および同学科の学生有志、ダンス部の協力を得ました。「身体と心で聴く 絵本の世界 vol.2」の開催に向け、実際に大学を訪問し、幼児教育を学ぶ学生とともに、絵本の世界をどのように身体表現へとつなげていくかを検討しました。大学図書館にて学生と共に絵本を選定し、題材や構成順、内容の伝わりやすさ、視覚的に楽しめる動きなどについて意見を交わしながら創作を進めました。公演当日は、学生による読み聞かせに加え、絵本の選定や動きを共に考えた2作品を上演しました。
公演後に学生からは、子どもとの距離の取り方・保護者への対応・環境面の課題が挙げられました。特に「初対面の子への声かけ」「泣く・怖がる子への対応」「親子参加時の関わり方」に難しさを感じた様子でした。一方で、子どもの反応を直接体験できたこと、他学生の行動から学べたこと、表現活動の楽しさを実感できたことを通して、次への意欲と成長の手応えを得ていました。学生にとって貴重な学びの機会を提供できたことは、Studio奏蔵舎の地域拠点としての存在意義を高める成果であり、今後も「子どもがアートを体験できる地域の場」を創出するための、大学と地域施設の連携体制が継続・発展していくことが期待されます。

「Studio奏蔵舎1周年記念公演」では、公募で集まった小学生4名や新潟青陵大学学生と一緒に絵本を題材に創作した作品、Studio奏蔵舎で招聘アーティスト(ダンサー・振付家 富岡櫂氏)がクリエーション・振付をした作品の2つを上演しました。出演者として、また観客としてダンス公演に関わることで、ダンスへの興味関心を喚起するとともに、昨年以上に多世代の来場を見込み、子どもたちにとって「本物のアート」を観る・体験する機会となることを目指しました。また、この町に身近にアートに触れられる場所があることを実感してもらうことも、本公演の目的の一つとしました。
公募で集まった子ども4名のうち1名は「絵本の世界」に観客として来場していた方で、その他3名はStudio奏蔵舎に初めて訪れる子どもたちでした。4名のうち1名は出演に至りませんでしたが、リハーサルに参加できたことや、初めてダンス公演を最後まで鑑賞できたことなどは、本人やその保護者の方にとっても貴重な体験となった様子で、机上の勉強とは別の学びの機会をお互いに得ることができたと思います。出演した3名は、初めての長いダンス作品にも関わらず、動きを提案してくれたり、物語に登場する鳥の動きを研究するために自宅で動画を見てきたなど、とても意欲的に参加してくれました。保護者からも、「街の中にあるスタジオで本格的な舞台、すごく良い経験でした」、「楽しかったようで、作品で使った曲を口ずさんだり家でピアノで弾いて楽しんだりしています」、といった感想を伺えました。出演した大学生からは、「異年齢交流ができて良かった」という声も挙がっていました。子どもたちとのクリエーションに初めて取り組み、参加希望者や保護者との面談を早い段階で実施することや、ワークショップ形式の実施にするなどの工夫が必要であることに気付きました。これは非常に重要な学びであり、芸術家として地域に根差すことの意義と難しさを肌で感じる好機となりました。
来場者からは、「帰宅後に子どもが小学生の動きを真似していた」「作品中のセリフや音楽を繰り返し口にしていた」といった感想も寄せられ、公演体験が日常に持ち帰られ、記憶に残るものとなっている様子が伺えました。未就学児の入場が可能な公演は多くない中で、本事業を通じて親子が安心してアートを楽しめる環境を創出できたことは、意義深い取り組みであったと考えています。

大学との連携を引き続き取っていくことで、子どもとの関わりをより深く考えたり、学生のフィールドワークの場として町の中にある文化拠点を活用する取り組みを行うことができます。来年度以降も、継続的な地域連携による「アート×教育×福祉」の拠点づくりを推進できると考えています。
また、子どもとの関わりにおいて、異年代交流の場はとても価値があり、また年齢別・発達段階別に適した作品構成や演出方法の開発にも思考の余地があると考えられます。今後は、保護者・地域住民の参画を促す「共創ワークショップ」形式の導入なども視野に入れながら、Studio奏蔵舎の在り方を地域と共に考えていきたいと思います。
地域の中に子どもたちへの導線を丁寧に構築し、幅広い世代がアートを通じて交流できる環境づくりに、引き続き力を入れていきます。
新潟青陵大学学生有志との動き探求の様子
Studio奏蔵舎1周年記念公演(©yoshitaka)
プログラムオフィサーより
昨年度の町屋本町アートプロジェクトさんの取り組みは、「公演に出演する人を公募し、一緒にクリエーションする」というものでした。今年は、上演の仕方や環境をどのように整えるか、という点も加わり、共に考える関係者を増やして取り組まれたことが印象に残っています。題材とする作品選びの際には、「この作品は、子どもと親がこんな感じで楽しめそう」「擬音語や擬態語があって楽しめる」といったコメントが幼児教育を学ぶ学生から寄せられ、子どもや保護者にどのように参加してもらうか、という視点は私自身も勉強になりました。
昨年度の「Studio 奏蔵舎 オープンイベント トリプルビル ダンス公演」、今年度の「身体と心で聴く 絵本の世界vol.2」と「Studio奏蔵舎1周年記念公演」の取り組みによって、鑑賞環境の作り方や、子どもたちと一緒に作品を作る時に気を付けたいポイントが明らかになってきました。多様な方々が、それぞれに合った文化芸術体験ができる地域の文化拠点として、さまざまな趣旨の事業が生まれることを期待しています。(高橋)