【インタビュー】盆踊りは気持ちを発散する場―松浜盆踊太鼓保存会 メンバー 寺山知子氏

  • 投稿日:
    2017.06.30(金)
  • written by:
    高橋 郁乃
  • 記事カテゴリー:
    インタビュー
  • ジャンル:
    伝統芸能
北区の「松浜まつり」。このおまつりは、とても賑わうものであるとお隣東区出身の執筆者もよく耳にしていた。そんな松浜地域総出のおまつりを盛り上げる重要な役割を果たしているのが松浜盆踊りである。
7月2日の新潟市伝承芸能保存会による「郷土芸能公演(郷芸)」にも参加される「松浜盆踊太鼓保存会」の活動に迫った。
松浜盆踊りは松浜まつりに欠かせない!
―寺山さんはどのようなきっかけでいつ頃から盆踊りと関わりを持たれ始めたのですか。

寺山:私の子どもが小学生の頃からなので、15年くらい前ですね。当時、子どもが小学校入ったばかりの時に他の方から誘われたのがきっかけで、子どもに太鼓を習わせようかと思って入りました。その時は付き添いで、見ているだけでした。でも、唄を一緒にやらないかと誘っていただいて。もともと盆踊りは好きだったので唄も踊りもやり始めました。今では専ら踊りの方が多いですね。
地元の松浜中学校はずっと昔から盆踊りを運動会のフィナーレで、みんなで大きな輪を作ってくたくたになりながら盆踊りを踊ります。
毎年8月24日には松浜まつりがあり、その時も中学生に活躍してもらいます。全町内あげての山車パレードや団子まきをして盆踊りをする、一年で一番大きなおまつりです。まつりの最後の盆踊りの時に中学生にも先頭になってひっぱってもらうために、保存会の先輩方と年に2~3回中学校に教えに行っています。

―松浜盆踊りは歴史があると聞いています。

寺山:松浜は明治から大正にかけて、材木の交易港として栄え、製材所や問屋、旅館、料理屋、殿方の遊ぶ場所も多かったようです。置屋もあったので松浜芸者や松浜小唄、松浜音頭もありました。松浜地区のコミュニティ協議会の地元学部会で松浜の地元ならではの宝を残そうということで、松浜盆踊りや松浜音頭、松浜小唄のDVDを作りました。この神社(松浜稲荷神社)はお祭りの時に櫓を組んで盆踊りをする、私たちにとっては自慢の神社なんです。
どこでも同じだと思いますが、一度なんとなく廃れて復活させたのが、松浜盆踊りです。同じ松浜盆踊りでも、みなと地区にも盆踊りがありますが、少し調子が違うところがあります。昔は各地区に盆踊りがあり、それをまたまとめて全体でやろうということになったのが30年くらい前なのかな。盆踊太鼓保存会の代表の羽田さんは、実は松浜の方ではないのですよ。お婿さんで来た方なのです。根っからの松浜の人が大勢ですが、代表が地元の人ではないというのは面白いですよね。

―復活させようと立ち上がったのは代表の羽田さんですか?

寺山:羽田さんです。羽田さんは昔から太鼓や唄をやっていたそうで、一度廃れたものを復活させる活動をしていたそうです。結婚して松浜に来て、盆踊りについて聞いて、廃れているけどもう一回頑張ろうか、とやってくださったのだと思います。
世代を超えて紡ぐ松浜盆踊り
―メンバーの年齢層としては

寺山:上は70代から下は小学生まで。去年は小学生が多かったんですけどね。去年の郷土芸能公演には小学生もいっぱい連れていきました。しかし、小学生6年生が中学に上がると来なくなる。部活とか始まって、段々と足が遠のいちゃって。でも、大人になると戻って来ることもあります。昔やっていたママが入って、またその友達をつれて来て、そこの子がやったりとか、または自分の孫が入って来たりとかね。
松浜まつりの時期になると、各自治会で太鼓が町内を練り歩きます。その時に、町内ごとに笛や太鼓、踊ったりするので、その町内の誰かができないとできませんので、教えてくださいと来るときもあります。
一応、12、1、2月は休み。3月から練習を始めて、7月のはじめの郷土芸能発表会に向けてやり、8月は各自治会や本町商店街の盆踊りに呼ばれていいきます。その時は櫓を組んでやります。北区の郷土博物館が11月3日くらいに博物館祭りをやるので、そこでは地元の郷土芸能の団体が7つ8つ、新崎の神楽なども来てやっています。松浜中学校の運動会が9月のはじめにある他、老人福祉施設に年に2~3回行っています。福祉施設では車椅子だけどいっしょに混じったり、ゆっくり一緒にやったり。まつりや盆踊りとなると地元の年配の方、喜んでくださいますね。
盆踊り保存会ができたのは40年くらい前かもしれないですけど、盆踊りはずっとあったのでしょうね。私は長女で親が厳しかったのですが、妹は小・中学校の時は夜に盆踊りに出かけていました。それがすごくうらやましくて。盆踊りって私にとっては、行きたいのに行けなかったもの。それで30代になってからやりたくてやっている。主人は子どもの頃にさんざんやったからやりたくないみたいです。年配の方からは、松浜盆踊りが砂浜で地面を蹴り上げながらやる砂掛け盆踊りだったので、地元の浜でさんざん砂をかけながらやったとか、小学校のグラウンドでやっていたという話をよく聞きます。
日々を発散する
―では最後に松浜盆踊りへの思いをお聞かせください。

寺山:普段、私は地元で自営の仕事をしているので、踊っていると、「印刷屋さんだよね、そんなことをするとは思えない」と言われたりします。盆踊りの歌詞には昔の切ない頃の、ナスのぞうすいしか食べられなかったというようなものや、他にも心にグッとくるいろんな歌詞があり、私は歌詞にもすごく惹かれています。みんなで太鼓を叩いて、疲れ果ててへとへとになるまで踊っているというのは、一種独特だけど、昔の人たちの大事な楽しみだったんだなと思います。盆にみんなが集まって、気持ちの発散場所だったんだろうなと思いますね。老人福祉施設に踊りに行くと、年配の人が喜んで見てくれているので特にそう思います。
今松浜では、私たち保存会が中学校で盆踊りを教える機会をいただいているので、とてもありがたいです。少なくとも3年間はみんな教わってくれる、この先大きくなってから盆踊りをやっても、「ああ!この踊りわかる!」って思ってくれるから、それはすごく嬉しいですね。こんな風に覚えてもらい、大事になくさないように残していきたいなと思っています。
取材協力:松浜盆踊太鼓保存会のみなさま
     松浜盆踊太鼓保存会 代表 羽田保さま
取材場所:寺山氏―松浜稲荷神社(平成29年5月18日)
     保存会練習風景―松浜小学校(平成29年5月17日)
ご紹介
○松浜盆踊太鼓保存会
【市民文化遺産】(ニイガタカラ.Netより)
昔は「松ヶ崎盆踊り」といわれ、稲荷神社の祭礼の時は境内で夜を徹して盆踊りを踊ったり、親戚の集まりや祝い事の最後には必ず盆踊りを踊ったりしたと伝えられている。
100年以上の歴史を持つという北区の郷土芸能。

○松浜まつり
8月24日と25日に、松浜稲荷神社周辺で開催される松浜まつり。
15町内が競い合う手作り山車のパレードをはじめ、松浜太鼓演奏、盆踊り、稚児舞など、様々な行事が催される。稲荷神社境内にて約60店の露店も出店。

○松浜稲荷神社(新潟市北区松浜本町3丁目4-1)
松浜の高台にある神社。境内には松が生い茂り、その向こうに阿賀野川を望むことができる。産土神として地域の人々の信仰を集めている。祭神は宇賀御魂命(うかのみたまのみこと)(倉稲魂)(うかのみたま)で、併せて大日霊貴尊(おおひるめむちのみこと)(天照大神)、誉田別尊(ほんだわけのみこと)(応神天皇)を祭る。もともと東区下山の地にあったといわれ、1731(享保16)年の松ヶ崎掘割の決壊後に下山から松浜の地に移ったと伝わっている。