【事業アーカイブ】7/14 語りの場vol.24「アートの広報宣伝~情報の発信と受け取り方~」

  • 投稿日:
    2021.10.18(月)
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    事業レポート
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    その他
文化・芸術の分野で活動する方々をゲストとしてお招きする、トークシリーズ「語りの場」。市民のみなさんが新たな視点や価値観と出会い、知り(学び)、自らの活動を広げていくことで、魅力あふれる活動が、まちに根付いていくことをめざしている。

7月14日は、テーマを「アートの広報宣言~情報の発信と受け取り方~」と題し、ゲストにステージナタリー編集長の熊井玲さんをお招きし、1時間半にわたり多くのことをお話いただいた。

語りの場vol.24「アートの広報宣言~情報の発信と受け取り方~」
開催日:令和3年7月14日(水)19:00~20:30 ※Zoomにて開催
ゲスト:熊井 玲(ステージナタリー編集長)
ゲスト:熊井 玲(ステージナタリー編集長)
2003年に演劇情報誌「シアターガイド」編集部員となり、2010年から2015年まで編集長を務める。2015年末に、ポップカルチャーのウェブメディア「ナタリー」を運営する株式会社ナターシャに入社。編集長としてステージナタリーの立ち上げに携わり、2016年2月にスタート。ナタリー全体が掲げる「全部やる」の精神にのっとり、全国のステージ情報を日々発信している。
ステージナタリーとは
ナタリーとは、①音楽、②マンガ&アニメ、③お笑い、④映画、⑤舞台(ステージ)の情報を紹介する日本最大級のポップカルチャー専門ニュースサイトです。熊井さんが編集長を務めるステージナタリーは、5つ目のジャンルとして、2016年2月に立ち上がりました。立ち上げ時は、熊井さんを含め3名のスタッフで運営していたステージナタリーですが、現在は6名体制で日々奮闘中とのこと。通常のニュース記事に加えて、ファンの方たちに向けて新たな切り口で情報を提供する「コラム」や、オンラインイベント「マツリー」の開催など、その活動は多岐にわたります。
時代のなかで変化する、情報の出し方
熊井さんが、前職である演劇情報誌シアターガイドで編集部員を務めていた2000年代初めの頃は、チラシや紙媒体で情報発信するのが主流。当時の主な情報収集は、劇団に直接電話で問い合わせて、郵送で情報を送ってもらうという流れでした。情報が編集部に届くまでに1~2か月かかることもあり、タイムラグも多かったそうです。

そんななか、ガラリと状況が一変したのが、2011年の東日本大震災。公演自体の中止や延期、開演時間の変更などが相次ぎ、タイムラグと言っていられない状況になってきます。

「月刊誌だったシアターガイドでは対応が間に合わないくらい情報がどんどん変わっていくなかで、『情報変更に対応してくれないのですか』という問い合わせが編集部に寄せられるようになってきて。情報媒体のはずなのに全く追いつけてないということに、私自身が違和感というか、ずれを感じ始めました。」

そして、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大。

「再び公演の中止や延期が多くなってきたことにより、情報の出し方が、チラシだけでは追いつかないなという感じで、方向性が変わってきました。」
「さらに自分たちのSNSで情報を出しても、SNSを見てくれないお客さんもたくさんいるということに、どの劇団も気が付き始めて、どこか掲示板的に情報を載せてくれるところはないかというところで、ステージナタリーに情報をくれる方が増えていきました。」

加えて、媒体(編集者)と情報を発信する側の関係性も変化が加速しているのではないかと熊井さんは考えます。

「ステージナタリーが立ち上がったのは、舞台業界にとってまだウェブの初期。その頃の関係性というのは、先方が出してくれた情報をそのまま載せますよ、みたいな関係性だったのですが、今は、ステージナタリーとして『あなたたちの情報を載せたいです』、取材対象者・情報提供者も『こういうふうに載せてほしいです』、両者で『じゃあ、こういう形で載せましょう』みたいな、ただ行ったり来たりではなくて、もう少し話をしながら情報を作っている段階のような気がしています。」

「情報を発信する側の人たちも、『媒体と一緒に情報を発信する』という方向に、少し意識が変わってきているのではないかなと思います。」
現代は情報の海。自分なりの取捨選択を。
様々な情報媒体が存在し、毎日新しいニュースが飛び交っている昨今。溢れる情報のなかから、自分にとって必要なものを選ぶためには、どのようにアンテナを張ればよいのでしょうか。

「情報の海のなかで、『自分に必要なものをいかに効率良く摂取するか』ということを考えていかなければいけない時代に来ているのではないかなと。そのためには、受動的ではいられないというか、こちらも能動的に情報を取りにいかないと。それはただ新聞を広げていても掲載されたすべての情報は得られないというのと一緒で、どういうふうに自分の欲しい情報をピックアップするかというのは、自分で模索していく時代になるのではないかと思っています。」
情報を発信できるタイミングはもっとある!
「語りの場」後半は、参加者の方々にもご発言いただき、質問にお答えする形で進行しました。今回は、劇場で公演制作に携わっている方、ご自身で劇団を主宰されている方など、様々な立場の方にご参加いただきましたが、「どのように公演の情報を露出していくか」という点について、熊井さんよりアドバイスをいただきました。

「仮チラシが決まった段階でもニュースにはできます。が、主催者さんに問い合わせをすると、『全部の情報が固まってから出したいので、ちょっと待ってください』と言われることが非常に多いのが現在です。でも情報は、何度も何度も出さないと、なかなか広く届かない。全てが決まってからドンと出すのも良いですが、全部が決まらなくてもニュースにできる可能性はあります」

「また、そのように全部の情報が固まるのを待っていると、チケット販売が始まり、公演日間近になり……と、告知の時間が結局短くなってしまう、ということがよくあります。可能であれば情報は、できるだけ早くから何度も露出したほうが良いと思うので、今後もし、ステージナタリーに情報を載せたいなと思ってくださる方がいたら、とりあえず仮チラシの段階で、一度アクセスしてみてください。」
最後に
編集者として、日々アーティストや劇団、劇場と対話をしながら、ユーザーに向けて情報を発信し続けている熊井さん。ステージナタリー立ち上げ当初、一日10本程度だったニュースのアップも、現在では一日20~25本と増え、これからは、動画などにも取り組んでいけたらと力強くお話しいただきました。今回の語りの場が、参加してくださった方々の今後の活動のヒントになれば、嬉しく思います。