【インタビュー】心に寄り添う音と、音楽。

  • 投稿日:
    2020.06.23(火)
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    インタビュー
  • ジャンル:
    音楽
新潟県音楽療法士協会 副会長 大竹孔三さん
(アメリカ音楽療法協会認定音楽療法士、ノードフ・ロビンズ認定音楽療法士)
新潟県音楽療法士協会では、平成29年度よりアーツカウンシル新潟の文化芸術基盤整備促進支援事業に採択され、音楽を用いて様々な社会課題を解決していく可能性について、調査研究してきました。今回はその活動の様子について、同協会副会長の大竹孔三さんにお話を伺いました。
「音楽療法」とは、どの様なものなのでしょうか。
音楽療法とは、音楽を用いて心と身体の機能を維持・改善・回復させるアプローチ方法です。
歌ったり、楽器を演奏したりすることで、表情が豊かになったり、集中力や認知力が高まったり、社会性が向上するといった効果が望めます。
対象として多いのは、発達障害のお子さんや、認知症をお持ちの方などです。身体機能の改善としてリハビリテーションの現場で活用されたり、精神疾患をお持ちの方の病院などでも用いられたりすることがあります。
新潟県音楽療法士協会について
新潟県音楽療法士協会は職能団体で、音楽療法の現場を増やすことや音楽療法士としての知識や技術を高めることを目的に活動しています。
新潟で音楽療法を取り入れている施設や病院はまだ少なく、認知度も決して高くはありません。現在(2020年4月時点)の協会会員数は11名で、そのうち認定音楽療法士の資格を有する人が7名、その他、音楽療法士(補)や音楽療法インストラクターの資格を有する人などが在籍しています。協会員は、発達障害を持つお子さんや、赤ちゃんから高齢者までを対象に、参加者のニーズに応じてセッションを行っています。
大竹さんが音楽療法士をめざしたきっかけは?
私は2歳からピアノを習っていました。成長していくなかで、つらい時や悲しい時、ピアノを弾くと、なぜか気持ちがすっと晴れて落ち着く、という経験がたくさんありました。音や音楽が人の心にもたらす効果をしみじみと感じ、そういったものを学問として勉強してみたい!と思ったのがきっかけです。私が高校生の頃、音楽療法は欧米で研究や実践が盛んでした。それで日本の大学で心理学を学んだ後、米国の大学院で音楽療法を学び、米国の音楽療法士の資格を取得し、ハワイで活動を始めました。その後、夫の実家がある新発田市に移住し、今に至ります。現在は、協会としての活動のほか、病院や障がい者施設等に出向き、セッションを行っています。
文化芸術基盤整備促進支援事業での取り組み
協会としての活動を広げていきたいと考え、助成事業に申請しました。採択当初は、普段の活動との違いに戸惑い、不安なこともありました。ですが、伴走型の支援ということで、アーツカウンシル新潟と一緒に調査をしたり、考えをまとめたりしていくことができました。申請者だけで取り組むのではなく、随時相談しながら進めることができたので、とても心強かったです。

3年にわたり助成を受けたのですが、1年目に先進的な取り組みを学ぶため、英国の文化芸術団体の実施する音楽プログラムを視察しました。なかでも、マンチェスター・カメラータという英国有数の室内楽団を視察した際の出来事が大変印象的でした。そこでは、認知症などの専門的知識が必要な対象者に音楽プログラムを提供する場合、演奏家と音楽療法士がペアになって取り組みます。演奏家の持つ芸術性や優れた演奏技術と、音楽療法士による安心できる雰囲気や療法的な専門知識に基づく働きかけが一体となり、より効果的なプログラムになっているのです。これは、まだ日本ではあまり例のない取り組みです。ぜひ新潟でもやってみたい!と強く感じました。

そこで、2年目は視察でお世話になった音楽療法士を英国から招き、その技法を学ぶワークショップを開催しました。県内外から音楽療法士や演奏家、医療・福祉関係者ら40人以上が参加してくださり、この参加者との出会いが次の年の取り組みにつながります。
「創造的音楽プロジェクト」について
助成の最終年度となる3年目は、これまでの活動でつながりを持つことができた演奏家の方と一緒に、「高齢者」「成人」「児童」の社会福祉施設に出向き、「創造的音楽プロジェクト」を実施しました。

内容は、まず、先程お話したような英国の取り組みを参考にしました。即興演奏を中心に、それぞれの対象者に合わせて歌唱や楽曲演奏を取り入れるなど、工夫しました。また、施設職員の方にも参加していただき、対象者の普段の様子や志向を聞きながらスムーズにプロジェクトを進めることができました。皆さん、最初は緊張している方が多かったのですが、回を重ねるごとに積極的なコミュニケーションや笑顔が増えていくなどの結果が出ました。対象者だけでなく、施設職員の方も音楽で自由に表現することを楽しんでおられる様子も見られて、嬉しかったです。

試行錯誤の連続でしたが、実際に演奏家の方と一緒に現場に出ることができ、お互いの専門性を再確認するなど、たくさんの気付きがありました。
今後の活動について
演奏家の皆さんとつながることができたので、今後も一緒に活動していきたいと思っています。今考えているのは、障がい者とそのご家族・介助者を対象とした「バリアフリーコンサート」で、ストレッチャーや車椅の方、自閉症で音楽を聴いて楽しくなると声が出たり動いてしまう方も安心して参加できるコンサートの企画です。
ご本人やご家族が気兼ねなく、本格的な生の音楽を聴きながら、時に参加しながら楽しめる場を提供したいと思っています。また、「創造的音楽プロジェクト」のような現場も維持しながら、今までコラボしていなかった分野の方達と一緒に、音楽の可能性を広げて行きたいです。音楽でどんなことができるのか、自分もワクワクしながら挑戦していきたいと思います。
取材場所:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館(令和2年3月18日取材)
○ご紹介
新潟県音楽療法士協会のこれまでの活動の様子、今後の予定などをご確認いただけます。ぜひご覧ください。