【事業アーカイブ】10/20 語りの場vol.33「会社員と演劇人、どうやって両立する?」(質疑応答編)

  • 投稿日:
    2023.11.30(木)
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    事業レポート
  • ジャンル:
    演劇
中村ノブアキさんをお招きした語りの場。
ここからは、当日、参加いただいたみなさんから寄せられたご質問に、中村さんからお答えいただいた部分をアーカイブします。
参加者のみなさんからの質問と中村さんのお答え
① 現在運営している団体が、土日のみしか練習できず、平日は難しい状況です。短い時間でも濃密なよい稽古にするための工夫などがあれば教えてください、とのことです。中村さんご自身が関わる時間が少ないこともあると思いますが、声がけの工夫などあるのでしょうか。
とにかく、いかに話し合いができる空気感をつくるか、が、一番重要だと思います。集団創作は、人間関係などが多分に影響してくると思うので、わだかまりなく言いたいことが言える環境であったり、思ったことがあればそれを遠慮なく言える人間関係だったりということに、すごく時間を割いています。作品の背景や裏テーマや「このセリフ言いにくいんだけど」「だったらこう変えようか」と話し合った方が早いので。逆説的なんですけど、稽古するよりも話し合った方が遠回りのようで近道で、一気に作品がよくなったりする場合があると僕は思っています。
①-2 仕事においても同じように心掛けられていますか。
全く一緒です。いかに部下にわだかまりなく話せる場をつくれるか、がとにかく重要だと思います。ひたすらフラットにフラットに。
② 会社員をするメンバーが中核を担う団体において、どれほどの規模までの公演を打つことができると思いますか。キャパや会場などを例に回答いただけるとわかりやすいです。
会社員がやる演劇において限界値がどこか、ということですかね。無いんじゃないですか。どこまでもいけると思います。本番始まったら僕はたまに劇場に行くぐらいなんです。稽古中につくってしまって、本番は舞台監督さんがいるので、「舞台監督さんよろしく」という感じです。本番中はむしろ仕事に集中できますね。なので、ロングランであってもできます。
俳優だと、劇場に行かない、というわけにいきませんね。そうなると、劇場規模などではなく、休める日数が限界値じゃないでしょうか。
②-2 JACROWで中村さん以外に、会社員という形でお仕事を持っている方はいらっしゃいますか。
いません。おそらくみんな、俳優で食っていけるようになりたいと思っていて、その結果、アルバイトという選択をしているのだと思います。
世の中の演劇人の大半は、それだけではなかなか生活できないという方々が大勢いると思います。生活するための何等かの働き口というものがあるはずです。そうすると、正社員であれ、アルバイトであれ、みんな二足の草鞋と言えば二足の草鞋だと思います。
③ 二足の草鞋を歩まれてきた中村さんの思う、ご自身の活動のブレイクスルーと思うエピソードやイベントを伺いたいです。
2001年にJACROW立ち上げて、ずっと鳴かず飛ばずで、動員が増えなかったんです。そんな時に、2015年の第20回公演で『ざくろのような』というビジネスものの芝居を上演しました。それまで、事件ものや暗い作品ばっかりで、ビジネスものはやっていなかったんです。もうやめようかな、と思った時に開き直って、やっぱり自分が書けるもの、自分しか書けないものを書きたい、つくりたいと思った時に、たまたま『ざくろのような』の元ネタになった話を知ってつくりました。その結果、評判がよく、賞もいただき、やめなくてすむ、と思いました。これがブレイクスルーです。自分のプロフィールにも「会議劇が得意」と書くのですが、自分の会社生活においても会議ってエンターテイメントだな、と思って、そこからビジネスドラマをやりはじめました。
ちなみに、次のネタを本屋で探していたときに田中角栄の本を読んだことから、政治家の会議こそ「会議劇の真骨頂じゃないか!」と思ったんです。それで2016年に最初の田中角栄の作品をやりました。それが今に続いています。
④ 舞台セットや小道具があると思うのですが、倉庫や拠点はどんなふうにされているか伺いたいです。
小劇場仲間4団体で事務所を借りて、割り勘しています。そこに小道具類は全部置いています。大道具はさすがに置けないので、大道具制作を外注している先のスタッフさんの差配にお任せしています。
⑤ 公演を打つ時の予算組、赤字になったときに他のメンバーは補填をすることがあるのでしょうか。
ありません。赤字は全部僕が一人でかぶっています。これはやっぱり、会社員をやりながらやっているという利点でもあるんです。もっと言うと、稽古中など少なからず迷惑掛けることもあるので、その償いというか、赤字は補填するから許せ、みたいな感じです。
⑥ 専属の制作者さんはいらっしゃるのでしょうか。
専属の制作者という意味ではいないです。助成金を獲得するためには必要な要素ですので、僕と演出助手が一緒にやっています。
「闇の将軍」公演について
前に新潟で「闇の将軍」を拝見しました。東京公演からどれくらいの期間で舞台を作り直されたのでしょうか。また、新潟で上演されたきっかけを教えてください。
東京公演が終わってから2日間東京でスタジオをとって作り直したように記憶しています。前回の会場はりゅーとぴあの能楽堂だったので、能楽堂の雰囲気を極力活かすように、置き道具だけにしました。動きも、橋掛りをどううまく使うかということを考えただけで、東京公演が二面舞台だったこともあり、舞台上で行われている動きはほとんど変えていません。2024年の公演は会場がプロセニアム形式なので、一面で楽しめるように最初から作り直します。
新潟公演のきっかけですが、田中角栄の芝居を新潟でやらないわけにいかないじゃないですか。最初は、新潟の小劇場 えんとつシアターで上演したのですが、もう少し大きいところでやりたい、と思い、りゅーとぴあだ、と。当初想定していたのはスタジオだったのですが、りゅーとぴあ職員から能楽堂を逆提案され、場所が決まったのでした。
「闇の将軍」四部作について 中村さんより
田中角栄さんの半生を描いた「闇の将軍シリーズ」、本編3話、短編1話、計4部作を12月から東京と新潟で上演します。チラシには政争劇と書いていますが、政治エンターテイメントだと思っています。駆け引きやドラマ、政治の話だけではなく角栄さんのプライベートな部分を描いたり、実話を基にしたフィクションとして描いています。ぜひお越しください。
公演情報

○「闇の将軍」四部作

脚本・演出:中村ノブアキ

2023年12月8日(金)~17日(日)@ 東京芸術劇場シアターウエスト

2023年12月23日(土)@魚沼市小出郷文化会館小ホール

2024年1月13日(土)@りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場

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JACROW ウェブサイト

りゅーとぴあ ウェブサイト

 

○関連企画 新潟日報×りゅーとぴあ 田中角栄没後30年記念クロストーク「今語る 田中角栄」

2023年12月21日(木)@日報ホール(新潟日報メディアシップ2階)

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